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なぜ必要?労働条件通知書等

労働条件通知書などの書面は、弊所が会社様と契約する際に必ず確認させていただく書面です。また、労働条件通知書、労働者名簿の作成等については法定とされ、監督官庁からは提出を求められることもある、非常に重要な雇用時の基礎的な書面です。

各書面の具体的な記載事項については、その他サイトで詳しく掲載されていますのでここでは割愛し、その趣旨や内容についてできるだけわかりやすく当記事で解説します。

現在の日本の労働基準法では「労働時間に対して賃金を支払う」ことが大前提となっています。

なにせ1947年に制定された法律です。

戦後すぐの時代背景や産業構成の当時からは予想や想定ができないことが発生している現在ですので、今を生きる我々にとってはちょっと理解難しい規定も残存しているのが実情ではないでしょうか。

「成果主義」や「生産性向上」が言われる他方、「賃金=時間」という考えは時代にそぐわない気もしますが、それはそれとして法律に従うしかありません。法律をより理解したいのでれば、そういった割り切りを持つことが混乱を少に留めるコツだと思います。

スタッフを雇用しますと、以下の書面を交付することになります。

  1. 労働条件通知書・・・・作成・交付・保管義務あり(罰則つき)
  2. 労働者名簿・・・・・・作成・保管義務あり(罰則つき)
  3. 雇用契約書・・・・・・義務なし(トラブル防止のため作成が望まれる)

ややこしくて面倒ですね。なぜこのような書面が要求されるのかを以下に説明します。

*わかりやすさを優先しますので細かな正確性やシチュエーションについては不問でお願いします

A社(製造業)

B社員(既婚)

この度、BさんがA社にすることになりました。(雇用契約の締結)

この過程を理屈っぽく考えてみます。

BさんはA社に対して労働を提供する代わりに、A社はBさんに賃金を支払う契約をしたわけです。

これの契約の過程をさらに分解してみます。

  • A社:この仕事をしてくれると20万支払うよ
  • Bさん:その20万をもらえる条件となる、仕事内容、場所、時間等はどうなるの?
  • A社:8時間~17時、休憩1時間、休日は土日、勤務地は…
  • Bさん:うーん 生活が厳しいので給与の面を何とかしていただけませんか?
  • A社:それでは、家族手当で1万を加算しましょう
  • A社、Bさんともに上記の内容で合意の上雇用契約に至りました

契約については、お互いが対等な立場で自由な合意ができることが原則となっています。

しかし、雇用契約の場面においては、どうしても雇用する側(会社)が優位な立場に立つのが常であるため、特別に労働基準法等で弱い立場の労働者を保護するための修正や規定がなされています。

弱い立場であるBさんは、どのような条件で入社したのかを明確に示される必要があることから、労働者保護のためA社に対し書面で明確に通知せよという規定が労働基準法で定められています。この義務を「労働条件通知書」と言われる書面の交付でA社は果たさないといけないことなるわけです。→ 労働基準法15条

労働基準法15条・・・労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。 この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/

入社して初めての給与をBさんは支給されることになりました。

明細を見ますと、約束していた家族手当の支給がありません。A社はそんな約束をした覚えはないといいます。

逆に、A社は「休日出勤は問題ない」とBさんが言っていたが、Bさんに休日出勤の依頼を拒まれたと主張します。Bさんもそんな約束はしていないと言い出す始末です。

言った言わないの問題発生です。

「雇用契約書」はこういったトラブルをあらかじめ防ぐために作成され、双方を合意した旨を確認する記名、押印がなされるわけです。→ 労基法で義務規定なし

記載内容は、「労働条件通知書」とほぼ同じ内容と言っていいでしょう。(労働条件通知書には記載必要事項があるので注意が必要です)

作成義務はないものの、労使双方お互いに作成保管しておいた方がいいという理由はこのあたりにあります。

整理しますと、「労働条件通知書」も「雇用契約書」も同じ内容ではあるが、労働基準法でその「契約内容の詳細」を記した書面を交付せよという具体的に示された書面が「労働条件通知書」と呼ばれるものになります。労働基準法上では、ズバリ「労働条件通知書」という呼称でなければならないという規定はないので、少し乱暴な言い方ですが、記載内容に不備がなければ「雇用契約書」という名称でも問題はありません。(一般的には労働条件通知書兼雇用契約書という呼称にします)

さて、このトラブルが解決した後Bさんの勤続は20年を超えます。

このあたりから原因不明の頭痛や吐き気を日常的に訴えるようになりますが、ある日突然職場で倒れてしまいました。

A社は直ちに救急で病院に搬送しますが、家族に連絡をしなければなりません。

しかし、緊急の連絡先を聞いてないので困ったことになってしまいます。こういった場合に必要とされるのが「労働者名簿」です。 → 労働基準法107条

労働基準法107条・・・企業に対し、各事業場ごとに各労働者(日々雇い入れられる者を除く)の氏名や生年月日、履歴等について記入した「労働者名簿」を作成することを義務づけ、労働者名簿の記入事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければならないことを定めています。

引用元:https://www.somu-lier.jp/

*緊急の連絡先の記載義務はありませんが、記載はしておいた方が良いです

受診の病院では倒れた原因がなかなかつかめません。そこで有力な手がかりとなるのが労働者名簿の「履歴」の項目でした。A社が医師にその履歴を提供しますと、Bさんが有機溶剤を使用する塗装の仕事を長期間行っていたことを医師は確認し。結果、有機溶剤中毒が疑われ適切な処置を受けることができました。

労働者名簿の必要記載事項とされる「履歴」ですが、社内でどのような職場歴(異動)があったのかを記載するというのが一般的であり、この記載がこういったケースで生かされることになります。 

*上記は極端な例であり労働者名簿の調製義務の趣旨はこれ以外にも当然あります

以上がサックリとですが、それぞれの書面の特徴となります。

弊社が関与させていただく会社様には、上記3点の書面を統合した一枚もののフォーマットをお渡ししていますが、少なくとも労働条件通知書と雇用契約書は1枚にまとめるのが実務的と考えます。

こういった法律の趣旨や内容をより詳しくしることは、よりスマートに事業運営することに繋がることになるのではないでしょうか。守るべき法律がある以上、その法律をより柔軟に自社にフィットさせたいものです。

入社時に何も書面を作成しない(渡さない)ことはどういうことか?

昨今の口コミは侮れませんし、監督官庁も厳しくみます。

冒頭の「労働時間に対して賃金を支払う」ですが、雇用契約の場面において非常に重要な意味を持つことになります。この理解不足により様々な問題が発生するケースが散見されていますが、これについてはまた後日に説明をしたいと思います。

次記事→労働費間と賃金 その権利と義務

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