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先日の記事でも書きましたが、現在の日本の法律では労働時間に対して賃金を支払うことが原則になっています。
労働時間につき法律の保護を受けない高度プロフェッショナル制(いわゆるホワイトカラーエグゼンプション)が2019年から施行されてはいますが、中小零細企業にとっては別世界の話のように感じてしまいます。(職種や業務は限定されますが、中小零細企業であっても高度な専門性を持って働くスタッフさんは要件を満たす可能性は勿論あります)
私も経営者の端くれとしてスタッフの賃金を決定する立場にありますが、早急に人員を確保したい場合等、その決定の根拠を相場感のみにおいてしまうことがあります。
未経験者は一律最低賃金からというルールをとられる会社様もありますね。
会社は賃金等の労働条件を決定し、この表示に対して応募者が申し込み、双方が合意にいたれば労働契約成立という流れですが、会社とスタッフはこの契約の内容を変更しない限り未来においてこれに縛られることになります。
労働契約法第6条(労働契約の成立)・・・『労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意すること』
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/
時給1.000円・・・・・そのスタッフの1時間あたりの労働の価値は1.000円である
月給250.000円・・・・そのスタッフの1ヶ月あたりの労働の価値は250.000円である
*月給者は月給(諸手当含)を所定労働時間で割ることで1時間の単価を割り出せる
上記のように考えることができます。
会社はその価値を認めて雇用契約を結んだ以上、そのスタッフが生み出す成果や勤務態度にかかわらず、法律で労働と認められる時間については、その労働時間分についてはきっちり賃金を支払わなければなりません。
仕事が遅い、言うことを聞かない、物覚えが悪い → そんなスタッフに数分程度の残業代を支払う必要はないだろう!仕事ができないから労働時間が長くなるのだ!
論外です。
法律上問題があるのは勿論ですが、その姿勢自体にも大きな問題アリです。
不満を言いたい気持ちはよく分かります。
(同じ時給単価)
その日に100の成果を生み出さなければならない場合に、Aは定時間内で終わらせることができるが、Bは10時間を要し、結果2時間の残業ということになります。
どうにも腑に落ちませね。仕事ができそうなAよりBの方が多い給与を持って帰るのですから。
だとしても「労働時間分についての給与をお支払いください」は1ミリも動かせません。
愚痴はほどほどにして、そのスタッフがどうしたらより大きな価値(成果)を生み出してくれるのか?を考えた方がより会社の利益に繋がります。
*雇用契約の内容を見直すという方法もありますが、今回はこれを考えないと言う前提での話です
普段いつもカリカリ不機嫌な社長から「期待しているよ」等と声を掛けられると、一時的であってもパフォーマンスが上がるタイプのスタッフもいるように(私がそうでした)、スタッフのパーソナリティーに働きかける方法、作業標準の見直しや人配の適正化など会社が戦略的に行う社内の環境整備や仕組み創り。
より大きな価値をスタッフに生み出し続けてもらう方法は、その会社によって様々な手法があるはずです。雇用契約に至る前段階の過程でも知恵を絞ればいろいろできることはあるのも同様です。
法律や制度に納得いかない部分があったとしても、まずはこれを真正面から受け入れ、その範囲内で、何が出来て、何が出来ないか、また、何をすべきなのか?を、必要に応じ専門家と相談しながらでも検討されて実行してみることをおすすめします。
他方、雇用される労働者側もいくつかの義務を履行しなければなりません。
昨今労働者の権利意識が強く、会社側は労働者の顔色をうかがいつつ人事を行うといった場面も実際にお見受けします。
これもおかしな話ですね。
会社は労働者に対し労務の提供を受ける権利を有し、単に出勤を受けるだけでその権利が充足されるわけではなく、労働契約で約束した内容の労務の提供を受ける権利を有します。さらに、会社は業務上の命令をする権利もあり、労働者はこれに従う義務もあります。
角度を変えて言いますと、会社も保護されるべき権利を持っており、事業運営上必要があれば堂々とこの権利を行使されてしかるべきだという見かたもできます。
昨今、パワハラ等の問題で会社は様々なリスクを負っているとえますが、問題となるのは、会社がこういった権利を濫用(その権利を本来の目的から逸脱して使用すること)することで発生するのであって、適切にその権利を行使するぶんには何ら問題はありません。(与える印象には十分気を配るべきです)
ここで分かりますよね。
先ほど論外と言いました、短絡した考えや姿勢に終始される経営者様は、スタッフにマイナスの印象を与えてしまいがちです。労働者は労働者としての価値観に基づく正当性を持ってのみ物事を判断するのが通常で、シビアな目線で経営者様を見て、敏感に物事を察知したります。
例えば、先ほどのBさんのネガティブめいた話を他のスタッフに言ってしまえば、コンプライアンス意識の低い経営者との烙印を押されることになるでしょう。(大抵の場合、聞かされるスタッフは見せかけの共感を一応は社長に表示します)
教科書的に言えば、会社、労働者双方に権利と義務があって、それぞれの義務を誠実に果たし、正しく適切に権利を行使しなければならないとなりますが、現実は杓子定規な対応では処理できない事の方がはるかに多いことでしょう。
このあたりはITサービス技術の進歩はありますが、現状段階においては人工知能が代替することは難しところで、人間的な賢さ、勘所、ツボ等の人間力が必要になってくるところだと思います。
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