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この10月最低賃金が引き上げられました。
弊所の関与先企業様も賃金の見直しをほぼ終えていただきましたが、来年以降の大幅な賃金改定をあらかじめ想定し大胆な賃金改定をご決断された企業様もあります。
こんな経験をされた事業主様はおられないでしょうか?
昇給などの待遇改善を図っても従業員の感謝の気持ちがみられず(あっても一時的)、その給与や待遇がやがて「当たり前」なものとなって、「さらに・・・」の空気がなんとなく社内に漂う。
財布と知恵を絞り相当な覚悟を持って待遇改善を図ったにもかかわらず、そんな状態の繰り返しでは経営者様の心は荒んでしまいます。
弊所が顧問として企業様と契約した際、あまりにも労働条件が悪すぎる場合にはこの改善をお願いすることもありますが、いざ改善をしていただいたものの、上記のような話を聞くと、事業主様同様に我々もなんとも言えない徒労感を味わいます。
アメリカの心理学者ハーズバーグが行った実証実験(説)が、このとにについて非常に参考になりますので、その一部をご紹介します。
*分かりやすくするために荒い内容になるかも知れません。さらに詳しく知りたい方は「ハーズバーグ」で検索してみてください。
【前提】:モチベーションは2つの要因から構成される。
その2つの要因を物差しに置き換えて考えてみます。
2つの物差しは全く別モノですが、従業員のモチベーションの動きについて相互に密接に関係しあっています。
さらに、「不満足」という物差しをフォーカスしてみてみます。
給与などの職場環境や待遇に問題があればあるほど、人の気持ちの物差しはマイナスの方向にどんどん進んでいきます。不満足という気持ちが大きくなっていくということですね。
職場環境などの改善を図ることで、このマイナスの目盛りは0に近づいていくわけですが、0からプラスに転じることはほとんど期待できません。つまり、不満は解消されても、それが満足に転化することはなく、単に「不満がない」という状態を生み出すだけだというのです。もっと言えば、積極的にやる気を起こす要因とはならないということですね。
冒頭の「当たり前」はこれでなんとなく説明がつきそうです。
従業員の価値観(正当性)から見れば、悪い待遇は必ず改善されるべきものであって、改善されて当然であるということです。
たとえ、それが経営者の努力や配慮、妥協があって達成されたことであっても、「当然だよね」という感覚のみで、「ありがとう」の気持ちを継続して持ってくれる従業員など希有な存在であると言えるでしょう。
問題なのは、それが当然であっても、経営者様に対して敬意が払われないことにあります。
さて、ハーズバーグ関連で、マズローの五段階欲求説についても触れておきます。これも詳しい説明はしませんので、興味がある方は勉強をなさってみてください。
人の欲求は、生理的欲求(食欲など人の本能)から始める5段階(最近は6段階という説も)からなり、下位の欲求が満たされることで上位の欲求に段階的に進むという理論ですね。
この五段階欲求説は、人事の面では活用しにくいということを言われる方もいますが、弊所は大いに参考にさせていただき、実際の業務においてもこれを活用してそれなりの成果を上げています。
その活用方法の一例として、60問からなるヒアリングシートを弊所で作成し、面接の立ち会いを依頼されたとき、人事異動のご相談を受けた際などに使用しています。
設問の例としては以下のような感じです。(実際はこれより文字数多く、多少複雑な内容にしています)
対象者が、何に心地よさを感じ、どのステージにあるのかなどを知るため、あらゆる角度から質問をします。1問につき20秒程度で回答してもらうことを要求し、ヘンな先入観やごまかしを極力排除します。
お金を稼ぐことを重視される方、仕事より家族との時間を大切にしたい方、起業意欲をお持ちの方、昇進意欲の強い方、皆さんぞれぞれの素直な欲求を把握するヒントになります。当然ですが、この結果に合否はありませんので(配属先判定の場合は重要な要素とする場合あり)、それを善し悪しの評価にしないことは勿論、この結果だけを持って物事を決定することはしません。
一刻も早く家に帰ってお酒飲みながらテレビを観ることを至福とする人に、「バリバリ頑張れば給与をあげてやれるから」などと奮起を促しても、あまり響かないだろうということは容易に想像つきます。不適当なやる気スイッチを押し続けてもいつまでたっても反応ナシといったところでしょう。
「人を大切に」という経営方針を掲げるのであれば、多様な価値観を持つ従業員の目線でみたときに、そのアプローチの方法は単純にお金だけではないということが分かると思います。より従業員に近づけば、これに応える従業員も一定数は必ず存在し、そんなところから寄せられる敬意もあれば、芽生える感謝もあるのではないしょうか。
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