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逆パワハラは様々な状況で発生します。
申し立てる者の性格によっても発生原因はいろいろですし、対処方法も多様です。
本記事に掲載します内容は、悪意をもって意図的に上司にパワハラを誘発させようとする者に対しての内容であり、逆パワハラ全般に関してお示しするものではないことをあらかじめお断りしておきます。
私の経験の範囲内での話になりますが、意図的に逆パワハラを発生させる者の動機として多くみられるのが、 何かしらの利益を得ることを目的とするものです。その典型例は退職時に有利な条件で失業保険を得ることです。
自己都合退職の場合に失業給付を受けるには2ヶ月超の待機期間を要し、給付の期間も短いのが通常です。これを会社都合として退職することができれば、最短一週間程度で受給できますし、給付できる金額も自己都合での退職より一般的には多くなります。
何とか会社都合での退職にできないものかと考えるのはままあることですが、ない事実を作り上げてこれを実現させようとする輩はいつの時代も一定の割合で発生します。
WEB検索すれば、自分の欲しい(都合のいい)情報をいくらでも手に入れることができる時代です。それなりの文言で検索をすれば、会社都合とする方法を指南するサイトもありますし、体験談としての成功例を記事として紹介しているものもあります。
*何の根拠もない不正確な情報を垂れ流しするサイトもあるようです。事実がないことにこれを悪用することは時間の無駄です。ハローワークは甘くありません。
意図的にパワハラをでっち上げようとする者が悪のプロジェクトを始動させるわけですが、こういったことを仕掛けてくるタイプの多くは思考が短絡しており、行動もこれに連動して現れてくるので、比較的その行動の特徴や予兆はつかみやすいです。
やっかいなのは、退職時まで何の前兆も読み取れない従業員の場合です。
在籍中はうまく職場に溶け込み、何にしても協力的で前向きな従業員が、退職後に態度を豹変させるといったことを経験された方もいるのではないしょうか?
実に見事に(表現は不適切ですが)会社都合として退職したケースをいくつか見聞きしてきましたが、この場合につきあらかじめ予防するということは非常に困難で、残念ながら現在私は対抗する手段を持ち得ていません。事後対応を余儀なくされるだろうことが正直なところです。
さて、短絡なタイプ(以下、「行為者」と示します)の場合ですが、パワハラを誘発するような言動を行うことから始まります。周りを巻き込んで巧妙にトラップを仕掛けてくる場合もあります。
上司を挑発する行為が定番なわけですが、業務上の指示を無視する、反抗するなど、ある種特殊な能力を持ってその上司の心理を読み取り、あらゆる手練手管を尽くして揺さぶってくる芸達者もいます。
職場で「行ってはいけないこと」「守るべきルール」などが就業規則(一部別出しの規定)には記載されます。会社として、何かしら処分を行う必要がある場合には、この就業規則に基づき処分を行うことが大原則になりますので、就業規則に記載のない事柄について原則処分は行えないことになります。職場のルールや行ってはならないことを可能な限り具体的に示しておく必要があります。
就業規則作成後は従業員に周知することが労基法で定められていますが、一部の事業主様はこれに消極的な方もおられます。従業員に有利な内容をあまり知られたくないという理由からですが、そもそも最近の従業員は賢く自分の権利はしっかり認識できているのが通常ですので、机にしまっておく等のなんちゃって周知は百害あって一理なしです。
むしろ、就業規則が会社を助けてくれる場合が多くありますので、積極的に周知し、「知らなかった」「見てない」を防ぐべきです。
軽微な違反を見逃し続けることで、職場の規律がやがて大きく乱れるということは実際の現場で見受けられることです。割れ窓理論ですね。この状態は行為者にとって非常に動きやすい環境だと言えます。
状況を斟酌して判断すべき場合もありますが、原則として、遠慮や配慮は不要です。会社にとって良くない行いで、就業規則に違反行為として規定されているならば、例外なく毅然と処分を行う必要があります。当たり前ですが、人に対して差をつける行為は厳禁です。会社の「難あり」に目ざとい行為者に、これを徹底的に利用されることになります。
指導・処分についてですが、乱発は就業員の反発を招き、士気を下げる原因にもなります。従って、会社の実態に即した処分レベルを設定する必要があることと、支店や店舗数が多い会社の場合は、その指導や処分の基準や内容に差異がないように整合性を取り、随時点検を行うことが肝要です。
言った言わない、聞いた聞いてないを防ぐことは勿論ですが、対外的な証拠として、会社が適切に行為者に対して指導・処分を行ってきたという記録を残しておく必要があります。さらに、その都度、反論できない適切な内容の指導・処分を行うことで、それ以上の増長した行為の抑止にも繋がります。
記録の方法についてはここでは詳しく書きませんのでそれぞれお調べください。ポイントとしては、行為者の言い分や反論があれば十分に聞くことと(これも記録)、実施された指導・処分について、行為者本人の思いを自由意志で書かせることです。大抵は反省文のような文言を書いてくるはずです。もしも書くこと自体を拒む場合は、その理由を丁寧に聞き取ると良いでしょう。これも記録として残してこくべきことです。
話は少しそれますが、懲戒解雇をせざるを得ない場合においても、会社はどれだけ解雇の回避努力をしてきたのかが、懲戒解雇に正当性があるかどうかのポイントの一つになります。
特に逆パワハラについて言えることですが、がなかなか顕在化して見えてこない背景として、その上司が自分にマネージメント能力がないと思われたくない等の理由で会社に報告しないケースがあります。
また、同僚がそういう行為を発見したとしても、行為者から攻撃されることを恐れ報告しないといった場合もあります。(仲間はずれにする等、報復行為を行う不埒な行為者も存在しました)
会社が継続して適切な教育を行うことで、社の姿勢として非違行為は見逃さないという文化を定着させたいところです。その教育の仕方も工夫が必要かも知れません。異常、異例を報告、連絡することを再三社員に教育しているが徹底しないといった声を聞くことがあります。
原因を探りますと、これを行わないことの表面的な不具合についての説明は行っているものの、これが巡り巡って自分達の生活を脅かすことにもなるのだとの認識まで至らず、その指導も馬耳東風といった感じの従業員も多いと感じました。
また、行為者にとって、反抗しやすい、引っかけやすいタイプの上司も確かに存在しますが、これが危惧される場合は配置そのものの見直しをする必要が出てくるでしょう。
ポイント1で述べましたとおり、原則として就業規則に記載のない事項について処分は行えません。具体的にどういった行為が逆パワハラに該当するのかを就業規則に示しておく必要があります。以下はその一例です。
「上長・管理者等が業務上必要な、指導、指示、命令を行う場合において ~ 中略 ~ 正当な理由なく、上長・管理者等が業務上行うべき指導、指示、命令を阻害し、または、精神的な圧力を加え、上長・管理者等の地位や権威を貶めるような行為」
実際に弊社が就業規則の作成を依頼された場合には必ずいれる文言になります。
部下に管理者が、明らかな悪意を持って(この判断は難しいですが)その他大勢の従業員の前で言われなく屈辱的な言動をされたとします。道義的に許せない行為であって注意されてしかるべきことですが、就業規則にこれを問題行為として、理由があれば処分するという規定がなければ実質おとがめなしです。管理者も場面によっては弱者の立場に晒されます。保護されるべきです。
会社は雇用する労働者に対し「安全で健康に働けるように配慮する」という義務を負います。脅威があれば会社も保護されるべき立場になるということは言うまでもありません。パワハラを申し立てられることを恐れ、なすべき指導、指示、命令の発出が萎縮してしまうことは実に馬鹿げたことです。
冒頭に申しましたように、対処の方法はケースにそれぞれによって様々です。誤った対応で問題を大きくする危険性もあります。重要と思われるポイントを5つ挙げましたが、社内で対応できないと判断される問題については、弁護士、社労士などの専門家に相談してみることを強くおすすめします。
以上、パワハラ同様に逆パワハラの場合も、それを許さない職場環境を作ることが重要であることがご理解いただけたと思います。
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