CASE STUDY

事例紹介

職場秩序を混乱させる集団の発生

かねてから上長に対して反抗的な態度をとり続けていたスタッフのAさんが、他のスタッフの士気を低下させ、生産パフォーマンスを低下させているのだとのご相談。

Aさんは当初社長のお気に入りであり、所属部門ではそれなりのポジションを与えられて一定の権限を付与される人物であった。Aさんを慕うものも少人数ながら存在し、その者に対し強い影響力を持っていた。ある時期からAさんの行動は独善的になり、他の部門のスタッフや上長の悪い噂を流布する等、取り巻きスタッフと共に会社にとって好ましくないインフォーマルグループを形成するに至る。当時の役員と幹部社員はこのグループについて単なる仲良しグループとの認識しかなく、その負の実態は社員の告発により知り得たものである。

社員の告発によると、Aさんの目的は、自分達にとって邪魔なスタッフを徹底的に攻撃し、より快適で都合のよい職場を作ることであったとのこと。具体的には、権限を与えられた部門の仕事を故意に遅延させ労働時間を稼ぐ等の行為をしていた等である。告発社員に「黒を白にする力がある」言わしめるほど、Aさんの手法は非常に巧妙かつ狡猾だったらしい。

上長が聞き取りを行うもその実態の把握は非常に困難であった。権限を与えていた業務について専門的に深掘りできるスタッフがおらず、下手な話し方をすると、上長とはいえ敵とみなされ攻撃の対象とされるのである。当然、事実関係がハッキリしない事柄につき制裁を行うことは出来ず、就業規則にもそれに類する規定は存在しなかった。

Aさんグループがある行程を担っている以上、これ以上パフォーマンスを落とされる(前・後行程にも影響を与える)となると会社はダメージ受けることになるが、Aさんの機嫌を損ねるとさらに大きなダメージを与えられる危険もあり、その対応に苦慮した。

とは言え会社はこれを看過できず、軽微な違反(上長に対する不遜な振る舞い)は明らかに認められたゆえ、これについては厳格に処分を行うこととした。ちなみに、Aさんの処分は過去複数回に渡るもので、それを一定の期間に繰り返すことでより重い処分に至るという規定が存在しており、Aさんもこれを承知していた。

この処分を契機とする聞き出しによって、Aさん本人がこれまでの行為を素直に告白し、反省するとは到底期待できない。そこで、ブラックボックス化していたAさんグループの業務について職務分析を徹底して行うことにした。成果に対して要する時間や手間を厳密にあぶり出し、過去の成果と時間、これに要した人手、資材等をつぶさに分析し、どれだけのロスや不効率があったのかを検証したのである。

通算した処分もやむなしとの通告時に、職務分析による結果をAさんに示し、本人のこれまでの振る舞いにより会社に不利益を与えていることを具体的に知らしめ、併せて、なぜそのような反抗的で好戦的な態度になるのかを丁寧に問うたところ(会社にその原因があるのか?など)、会社に対して個人的な不満があることをここで初めて述べるに至る。我々にとっては些末な問題と思えたが、これが本人にとっては許せないことだったらしい。

その不満に対してAさんを諭し、会社が改善すべき点についてはこれを素直に認めると同時に、Aさんが行っていた扇動行為についても反省を促した。最終的には本人もこれを認め、巻き込んでしまったスタッフと、他部門のスタッフに対しても謝罪を行うことになった。

会社に与えてきた不利益については、反論不能なその根拠と具体的な数字を示し、本人の会社規定により厳しい処分をすることになった。

【本ケースのポイント】

  • Aさんのパーソナリティーをよく知った上で、当人が素直に話をできる環境を作ることに注力すること
  • 行った違反について、それが会社にどう影響するか、なぜ処分が必要であるか、どのような言動がこれに抵触するかを具体的に示すこと。
  • Aさんの言い分を丁寧に漏れなく聞く作業を怠りなく行うこと。会社にただし、その言い分に理由や根拠がない事柄については、何が誤っているのかを示し毅然とこれを否定し諭す。言い分に理由や根拠がある場合には、会社は素直に認め、これを改善することを本人に示す。
  • 特定の職務について代替要員を作らず権限を集中させることは危険である。

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